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2013.9.13

徳之島ノート No.12「母浜回帰」

 

Photo by Ryuji Miyamoto 2013

Photo by Ryuji Miyamoto 2013

ウミガメは広大な海洋を回遊する動物である。回遊の実態はまだよく分かっていないが、成熟したメスのウミガメは夏の繁殖期になると自分の生まれた砂浜に帰って来て産卵する。

なぜ、どうしてウミガメが自分の生まれた砂浜に戻ってくるのかは、まだ謎の部分が多いようだ。サケが生まれた川に戻ってくるように、ウミガメが自分固有の浜にこだわるのを産卵場固執性というらしい。生まれた記憶のある場所で新たな命を産み出すのは、初めての知らない場所で産むよりも安全性と適応性に優れているのだろう。回遊する生物が生まれた場所に戻って産卵するのは、生物の進化の過程で発達した生存のメカニズムとしては高度に完成したシステムである。

こうした産卵のためのウミガメの回遊行動を母浜回帰という。生物が長大な生存の時間をかけて創り出した自然のシステムから学ぶことは多い。ウミガメ産卵の母浜回帰の現場を観察した体験から思うに、現代の我々に欠けている、根本からもう一度見つめ直す、原点に戻って基本を確認する、という思考の指標になるような気がした。生まれた場所に戻ってくる、母の所に帰ってくるというと後退志向だ、衰退であると思われるかもしれないが、まったく違う。自然環境保護、希少野生生物保護ということだけでなく、人類がウミガメのような野生生物から学ぶべきことは、まだ数多くあるように思われてならない。宮本隆司・記

参考文献 「回遊」畑瀬英男 [ウミガメの自然誌・亀崎直樹編/東京大学出版会]