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2013.10.18

徳之島ノート No.13「南島の入墨」

 

 

小原一夫「南嶋入墨考」筑摩書房(1962)より

小原一夫「南嶋入墨考」筑摩書房(1962)より

 

かつて南西諸島の島々ではハジチと呼ばれる、女性が手の甲に入墨を施す習慣があった。喜界島から奄美大島、徳之島などの奄美群島、沖縄諸島、与那国島に到る八重山諸島の琉球文化圏全域で行なわれていた。

小原一夫の研究書「南嶋入墨考」筑摩書房(1962年刊行)によると、徳之島では「結婚するのも一度 死ぬのも一度 手入墨欲しさは 命かぎり」と歌われて女性達の入墨に対する思いは深く激しいものがあった。そして手の甲の入墨は「美しい自然に恵まれた現世と、果てしなき暗路をたどるが如く思われているあの世とをつなぐもの」と考えられていたようだ。現代の若者達がファッションとして気軽に身体にイレズミする、いわゆるタトゥーするのとは動機に於いてかなり違っているように思う。

入墨の文様は島毎に、集落毎にそれぞれ違っていて様々な文様がある。小原一夫は1930年から1932年にかけて、南西諸島で現地調査を行い多くの文様を採集した。それらを見てみると指に施された文様はどの島でもほぼ同じであるが、手の甲と手首の文様が違っている。徳之島では46名の女性達の両手の入墨文様が記録され、それぞれの方々の名前と場所が記載されている。調査当時50~70歳で現在ご存命の方がいないだけに貴重な記録である。

今年98歳になる徳之島で生まれ育った、わたしの母親にこの本を見せると、「あらっ、このひと知ってる、入墨の手も見たことある。どうしてこんな本があるの?」と本の図像を手で撫でながら懐かしそうに昔の話をしてくれた。記録されていた入墨の文様がそのとき命を甦らせたように思えた。宮本隆司・記